4月30日に発売されたARTMAオリジナルサドルを、発売当日に取り付けて実走テストしました。
先日のサイクルモード2026で辻善光さんのブースを見つけ、コンセプトに惹かれてその場で予約注文していたものです。「前乗りがしやすい」という評判は本当でした。ただ、万能ではありません。良かった点も、残念だった点も、正直に全部書きます。
この記事は約 8分 で読めます。
まず結論から
- 前乗り(前重心)への移行がスムーズ。ワイドノーズの恩恵は本物
- サドル表面がサラサラで、脚のひっかかりがない
- 0度設定では前へ滑る感覚があった(+1度に変更して解消)
- 142mm幅は私(130mm幅が合う体)にはやや広め
- 前乗りを多用する人・サドルを前後に広く使う人・142mm幅が合う人におすすめ
- お尻をしっかり固定したい人・130mm以下の幅が合う人には不向き
ARTMAサドルとは|元プロレーサー×フィッター監修モデル
ARTMAは、元プロロードレーサーでプロコーチ・フィッターの辻善光さんが監修する自転車ブランドです。
今回のサドルはARTMAが独自開発したオリジナルモデルで、4月30日よりダイワサイクルおよびチームZenkoの物販サイトで一般販売が始まりました。スペックと価格は以下の通りです。
| モデル | レール素材 | 幅 | 価格(送料込み) |
|---|---|---|---|
| スタンダード | クロモリ | 142mm | 10,500円 |
| ハイグレード | カーボン | 142mm | 18,200円 |
私が購入したのはクロモリレール版(10,500円)です。

辻さんはレーサーとしての走る感覚と、フィッターとしての身体への知見を両方持っているのが特徴です。
ARTMAサドルのノーズ幅は42mm(先端から15mm地点)。
一般的なロードサドルのノーズ幅が20〜25mm程度であることと比べると、かなりワイドな設計です。
辻さんは「ワイドノーズなので内股が擦れることを想定し、滑りやすい素材を採用した。その分、滑って欲しくない部分に滑り止めを貼り付けてある」と設計の意図を説明しています。
サイクルモード2026の会場で辻さんのブースを見つけ、実物を手に取ってその場で予約注文しました。「フィッターが設計したサドル」というコンセプトは、市販品とは発想の出発点が違います。ライダーの乗り方・体型・ポジションを熟知した人間が作ったサドルが、実際にどう機能するのか。それを確かめたかったのが購入の一番の理由でした。

取り付け直後に感じた「前乗りのしやすさ」
走り出した瞬間、「なるほど」と思いました。前乗りしたときの安定感と安心感がすごかったです。
ARTMAサドルの大きな特徴が、ワイドノーズです。
サドルの先端(ノーズ)部分の幅が他のモデルより広く設計されているため、前乗りしても股間にノーズの細い部分が当たってくる感覚がありません。
私がこれまで使ってきた130mm幅のサドルは、前に乗り込むとノーズが股間に当たってきます。
それがARTMAサドルでは、前に座っても圧迫感がほとんどなく、前乗りのポジションのままキープし続けることへのストレスがありませんでした。
都内の通勤路にはちょっとした上り坂がいくつかあります。スッと前乗りに移行して、そのまましっかり踏み込んで登り切る。この動きが、ストレスなくできました。前乗りを多用するライダーにとっては、体感できるレベルの違いです。
サドル表面の加工も好印象でした。脚と接触する部分がサラサラで、ペダリング中に脚が引っかかる感覚がありません。地味に大きいポイントです。ペダリングの流れを邪魔するひっかかりがないので、脚の動きがスムーズに続きます。
前乗りがなぜ上り坂に有効なのか
ARTMAサドルのメリットを最大限に活かすのが、前乗りポジションです。
なぜ前乗りが上り坂に有利なのかを少し補足します。
体の重心が後ろ寄りになるとペダルに体重をかけにくくなり、踏み込みの力が逃げやすくなります。
前乗りにすることで体をクランクの真上に持ってきやすくなり、体重をペダルに効率よく乗せられます。
特に都内のような短い上り坂では、瞬間的に前乗りへ切り替えて一気に踏み切る動きが有効です。
私が通勤で実感したのも、まさにこの部分です。ARTMAサドルのワイドノーズは、この「前乗りに切り替えてもストレスがない」点で、日常的な通勤ライダーにも十分実用的なメリットがあります。
スペックを実測で確認|カタログとの差は6g
クロモリレール版のカタログスペックは、重量258±2g(ブラック)、259±4g(ホワイト)です。
実測したところ264gでした。カタログ値より6g重い計算ですが、許容誤差の範囲内と判断しています。重量にこだわるならカーボンレール版を選べば良い話なので、クロモリ版に不満はありません。

裏面には取り付け角度の目安ラインが印字されていました。
0度・−1度・+1度の位置が記されており、初期セッティングの目安になります。
自分でサドル角度を微調整するライダーには親切な設計だと感じました。

最初は標準の0度で取り付けて走り始めました。

正直に書く|残念だったポイントが2つあった
良い点だけ書いても正直なレビューにはならないので、気になった点も書きます。
① 前に滑る感覚があった
0度設定で走っていると、乗っているうちに前方向にずれていく感覚がありました。
ビブタイツとの相性なのか、乗り方の問題なのかは特定できていませんが、前への滑りは明確にありました。
滑り止め加工はサドルの中心〜後部に施されています。もう少し密度を高くするか面積が広いと安心感があったかなと思いました。前乗りの安定感があるサドルである分、後ろに戻ったときの固定感が弱いと感じました。
② 142mm幅が私には少し広かった
私は過去の試行錯誤の末、130mm幅のサドルが自分の体に合っていると確信しています。
ARTMAサドルは142mm幅。しっかり奥まで座ると、腿にサドルが当たってくる感覚がありました。
表面がスムーズな加工なので他のサドルよりは当たりが柔らかく感じますが、それでも長時間乗ると意識します。
サドル幅は坐骨幅との相性が大きく影響します。
これはあくまで私の体の話であって、142mm幅がしっくりくる方にはこのデメリットは関係ありません。
逆に、142mm幅が合う方には前乗りのしやすさと幅の快適さが両立するサドルになるはずです。

+1度設定に変えたら、大当たりだった
前への滑りを解消するため、+1度設定(前上がり)に変更しました。
これが個人的には大当たりでした。
前への滑りがなくなり、腰がサドルの上でしっかり落ち着く感覚があります。
さらにワイドノーズの恩恵をより受けやすくなりました。
前乗りでも標準のポジションでもお尻が安定するので、上り坂でスッと前に乗り込んでそのまま踏み込む動きが、よりスムーズになりました。
サドルの角度は0度から始めて微調整するのがセオリーですが、前への滑りが気になる場合は+1度を試してみることをおすすめします。重心が後ろに落ち着くことで、体がサドルに安定して乗れるようになります。
今後は+1度設定で継続して乗り込んでいく予定です。長期使用でどう変わるかは、また後日レポートします。
こんな人に向いている・向いていない
実走して感じた正直な評価をまとめます。
向いている人
- 前乗り(前重心)を多用する人
- サドルを前後に広く使い、乗る位置を頻繁に変える人
- 142mm前後の幅がしっくりくる人
向いていない人
- お尻をサドルにしっかり固定して乗りたい人
- 130mm前後のサドル幅が合う人
私のように130mm幅が合っている体でも、前乗りの快適さという点では十分な恩恵を感じました。ただし幅の問題は正直気になります。体の相性次第で評価が大きく変わるサドルだと思います。

サドル選びはなぜ難しいのか|フィッター監修という視点
サドルは「どれが良い」ではなく「自分に合うか」で決まる機材の筆頭です。
幅・形状・硬さ・素材・角度の組み合わせで体感が大きく変わるため、正解を見つけるまでに時間とお金がかかります。
私もこれまで5本以上のサドルを試してきました。
その経験から言うと、「良いと評判のサドル」が自分に合うとは限りません。坐骨幅・骨盤の前傾角度・乗り方のクセによって、最適なサドルは人それぞれです。
その点でARTMAサドルは「ライダーの乗り方を想定した設計」というアプローチが面白いと感じています。
前乗りをよく使うライダーのために、ノーズを広げる。内股の擦れを想定して素材を選ぶ。
市販品メーカーがあまり踏み込まない部分を、フィッターの経験から設計に落とし込んでいます。
よくある疑問に答えます
Q. 前乗りとはどういう乗り方ですか?
サドルの前側に座り、骨盤を前傾させてペダルに体重をかけやすくする乗り方です。
登り坂や高出力域での踏み込みに有利で、加速したいときのほか、ヒルクライムやスプリントでよく使われます。
通常の平地巡航と使い分けることで、脚や腰への負担を分散させる効果もあります。ARTMAサドルはこの前乗りポジションを取りやすくするためにノーズを広くした設計で、前に乗り込んでも股間への当たりが出にくくなっています。
Q. 通勤での実用性はどうですか?
片道7km・スーツ姿でのロードバイク通勤に使っています。
数日間乗った時点でお尻の痛みは出ていません。
前乗りポジションを使う頻度が増えた分、登り坂の踏み込みが以前より楽になった感覚があります。
通勤距離が短いため1回のライドでの負荷は小さいですが、長距離走行での耐久性は今後のロングライドで確認して改めてレポートします。
Q. クロモリとカーボンレール、どちらが通勤向きですか?
通勤目的であればクロモリレールで十分だと思います。
カーボンは軽量のためダンシング時に有利と思いますが、片道7kmの通勤では体感差を出しにくいです。
価格差が約8,000円あるため、まず試してみるならクロモリが現実的な選択肢です。長距離ブルベや遠征ライドに使うなら、カーボンを検討する価値があります。
Q. サドル幅が合わない場合はどうすればよいですか?
ARTMAサドルは現在142mm幅の1サイズ展開です。
私のように130mm前後が合う体では、幅の問題は根本的に解消しにくいです。
ただ、サドル表面の滑らかさと前乗りのしやすさという恩恵は、幅が多少合わなくても感じられます。
幅が気になる方は試乗の機会があれば先に確認することをおすすめします。
Q. ARTMAサドルはどこで購入できますか?
チームZenkoの物販サイトとダイワサイクルで購入可能です。
私はサイクルモード2026の会場で辻さんから直接コンセプトの説明を受けて、その場でチームZenkoの物販サイトから予約注文しました。在庫状況は変動するため、購入を検討している方は公式サイトまたは販売店で確認することをおすすめします。
※2026年5/4時点ではすでに売り切れ。再販をお待ちください。
まとめ
ARTMAサドルのファーストインプレッションをまとめます。
- 前乗りへの移行のしやすさはワイドノーズ設計通り。評判は本物だった
- サドル表面のサラサラ加工で、脚のひっかかりがない
- 0度設定では前に滑りやすい。+1度設定が私にはフィットした
- 142mm幅は130mm派の私にはやや広め。幅が合う人はより快適なはず
- 前乗り多用者・サドルを前後に広く使う人・142mm幅が合う人には特におすすめ
クロモリレール版10,500円(送料込み)は、フィッター監修モデルとして入手しやすい価格帯です。継続して乗り込み、長期使用でどう変わるかを引き続きレポートしていきます。


コメント